平城宮跡の工事

 2020年現在、平城宮跡の各地では「第一次大極殿院」の復元整備をはじめ工事が行われていたり、朱雀門前の積水工場跡地などの新たな計画があります。公園内の工事は盛んですが公園全体の利用は可能です。このページでは、平城宮跡で行われている工事や計画についてまとめます。


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工事の背景

平城宮跡の国営公園化

 甲子園30個分の面積がある平城京の跡地「平城宮跡」では、2008年に国土交通省による「国営公園」として整備が行われることが決定しました。「平城遷都1300年祭」のメイン会場として使用された後、工事が本格化し「第一次朝堂院」の整備工事や朱雀門の南側におけるガイダンス施設「天平いざない館」の整備をはじめ、既存の園路の再舗装が行われました。同時に平城宮跡南側では公園利用者の為の便益施設として交通ターミナルや飲食、物販施設が奈良県によって「県営平城宮跡歴史公園」として整備されました。これらは平城宮跡南側における国交省及び奈良県の施設群を「朱雀門ひろば」として、第一次朝堂院を含めたエリアを2019年に第一期開園として開園しました。

 

 尚、「国営平城宮跡歴史公園」は便宜上の名称であり、既に整備が進む奈良県明日香村の「国営飛鳥歴史公園」と共に飛鳥歴史公園の平城宮跡地区として整備が進められます。

 

 国営、県営のお話につきましては、こちらのページにて詳しく解説しています。

 基本計画では、一条高校方面から西大寺駅方面へ向かう県道や、平城宮跡中央部を南北に貫く「みやと通り」及び、近鉄奈良線の移設が触れられており、詳しく解説すべき項目ではそれらを解説します。

 

一気に全て工事しない

 平城宮跡の国営公園化の整備は全ての工事を一気にするのではなく、場所を替え順番に工事が実施されています。先述の通りしばらく工事をしていた朱雀門前の施設は完成し、現在は第一次大極殿院を中心に工事が進められています。


↑天平いざない館(朱雀門ひろば)

↑第一次朝堂院


現在工事中

第一次大極殿院復元整備

※見学デッキは2021年3月31日で終了。

 2010年「平城遷都1300年」に合わせて整備された「第一次大極殿 正殿」の前、近鉄電車の車窓からも見える工事が「第一次大極殿院」の「南門」の復元整備工事です。2010年に正殿が復元されて以降しばらくの間目立った動きがありませんでしたので正殿を「第一次大極殿」と呼称することもありますが、正殿の前、現在は砂利の広場となっている部分をぐるっと取り囲む形で回廊と門、2つの楼が存在していました。これらの建物群を「第一次大極殿院」と呼称します。

 

 この第一次大極殿院を復元するプロジェクトがあり、2020年現在は「第一次大極殿院 南門」の復元工事が進められています。尚、正殿は文化庁による復元整備でしたが、南門、回廊などの復元整備は国土交通省により進められています。尚、上の項目で触れましたが一条高校方面から西大寺駅方面へ向かう東西の県道と、第一次大極殿院の復元整備計画の範囲が重なっており、県道移設が復元整備より遅い場合は一部は県道移設後に整備されることとなります。

 加えて、復元される施設の管理施設として第一次大極殿院の東側に新たな建物の工事が進んでいます。

↑南門復元工事の覆屋

↑見学デッキ※見学デッキは2021年3月31日で終了。


 2020年現在は「第一次大極殿院 南門」の復元工事が進められています。この様子を工事覆屋に付随した見学デッキから見学することができます。また、復元に関する情報や技術を「第一次大極殿院 復元事業情報館」にて公開されています。どちらも無料で見学できるスポットですので、復元工事が行われている今しか見れないスポットとして是非訪問してみてください。※見学デッキは2021年3月31日で終了。

↑復原事業情報館

↑復原事業情報館で展示されている模型


その他の工事

 その他、園路の整備などの工事が行われている可能性があります。

公園は利用可能

工事エリアは全体から見れば小さい

 復原工事を行っている場所については、建物をひとつ建てるので大規模な覆屋や作業ヤードが設置されていますが広大な平城宮跡全体から見ればわずかなエリアとなります。また、工事を実施しているエリア以外の部分は公園利用は可能です。

今後の計画

朱雀門前に正倉院を再現?

 2020年になり、「平城宮跡に正倉院を再現する」という旨の見出しにて新聞報道がありSNSを一時賑わせました。この案件については2008年の平城宮跡歴史公園の基本計画において奈良県が整備する施設の「歴史体験学習館」として記されていたものです。「平城宮跡歴史公園」の施設として整備されるものではありますが、厳密には「平城宮」の「跡地」からは外れており、「天平いざない館」の南側に整備されます。そのうち西側の半分程度の敷地を先行して整備される様子です。

 

 2018年より「平城宮跡歴史公園歴史体験学習館の整備に関する検討委員会」が設けられ審議されてきました。大宮通りに面した西側の「遣唐使船」に対(つい)になるようなシンボリックな建造物=ランドマークとして正倉院をモチーフにした施設の設置が審議されました。尚、この整備では3つの体験テーマ「歴史」「文化くらし」「宝物」を3棟の建物で整備することとされ、残り2つの建物は天平いざない館と意匠が統一されると審議されています。

朱雀門南側(積水跡地)

 2019年に開業した「朱雀門ひろば」のうち交通ターミナル、物販飲食施設がある県営公園側はかつて積水化学の工場でした。奈良県大和郡山市への移転が進み朱雀門ひろばの開業となりましたが、大宮通りを挟んだ向かい側は積水化学の工場として稼働を続けたままでした。その後、積水化学側の事情で工場は閉鎖。当初は住宅開発の計画もありましたが2018年に積水化学、奈良県、奈良市が協定を締結。以後、奈良県が主導で平城宮跡と一体的な整備が進められることとなりました。

 

 詳細な計画で着工するまでの間の約4年間を対象に「奈良めぐり平城宮跡前駐車場」が暫定的に整備され2021年10月1日に開場しました。

暫定整備着工前の様子
暫定整備着工前の様子

近鉄奈良線の移設

 この記事の冒頭でも触れましたが、平城宮跡歴史公園の基本計画では平城宮跡を東西に貫く近鉄奈良線の移転についても触れられています。これについては度々話題になりましたが、2020年7月に大宮通りの地下に移設する奈良県案を基に協議を行っていくと、国、県、市、近鉄が合意に至りました。この奈良県案では朱雀大路の復元された区間の南端大宮通り地下に「仮称 朱雀大路駅」が設置されることとなり、平城宮跡へのアクセスが飛躍的に向上します。また、現在の新大宮駅を大宮通り地下へ移転。加えてJR線との交差部分に「仮称 油阪駅」の復活(かつて近鉄線の地下化前に存在)が盛り込まれています。

 平城宮跡の西方にある最寄り駅で、開かずの踏切でもある「大和西大寺駅」周辺の高架化も併せて奈良県案に含まれていますが、近鉄による橋上駅舎内での商業エリアの増床及び、奈良市による橋上東西自由通路の整備など大和西大寺駅橋上部分で恒久施設の整備が進んでいることも蛇足ながら触れておきます。

詳細未定のエリア

 これまで紹介してきた工事及び計画以外には東院庭園南側で国道24号線奈良バイパスまでの範囲での奈良県による整備など詳細が決定されていないエリアや、既に平城宮跡として公開されているものの平城宮跡歴史公園としては第一期開園エリアから外れた部分の整備の具体的な内容も気になる所です。

注釈・参考文献

※このページでは各計画及び資料内に記されている文言から表現をわかりやすく変更している部分があります。

 

参考文献

・平城宮跡歴史公園 第一次大極殿院建造物復元整備計画 https://www.kkr.mlit.go.jp/asuka/heijo/basic/pdf/fukugenseibi.pdf

・国営飛鳥・平城宮跡歴史公園 平城宮跡区域基本計画 https://www.kkr.mlit.go.jp/asuka/heijo/basic/pdf/kihon.pdf

・平城宮跡歴史公園歴史体験学習館の整備に関する検討委員会について 各資料 http://www.pref.nara.jp/item/200569.htm

・平城宮跡に正倉院再現へ、奈良県 25年度末目標、ほぼ実物大 (共同通信配信のYahooニュース) https://news.yahoo.co.jp/articles/cd13660f9d210747568683c8956fe5f1c8815723

・平城京の“中枢”へ 未解明な「一等地」の発掘調査にかかる期待 (Sankei Biz)https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/200223/cpd2002230830002-n1.htm

・奈良)平城宮跡南側を待機場に 奈良公園バスターミナル(朝日新聞) https://www.asahi.com/articles/ASN1P3G3SN1PPOMB004.html

・近鉄線「移設案」合意 - 踏切の改良前進/国・近鉄・県・奈良市(奈良新聞) https://www.nara-np.co.jp/news/20200717090953.html

・平城宮跡の近鉄奈良線移設へ合意(NHK) https://www3.nhk.or.jp/lnews/nara/20200716/2050004845.html

関連リンク