シェアする
奈良盆地の北の端、大きな古墳といくつかの集落が点在していました。そこは現在「奈良」と呼ばれる場所。この場所が今から大きく開花くとは知らず…。
西暦710年、今から約1300年前、先進を行く近隣国に劣らないよう新たな日本の首都「平城京」が建設されました。その場所は「奈良」。
日本の首都「平城京」は、海外との交流団から学んだ事を活かした新たな文化を創り出し、都の中核となる「平城宮」を中心に巨大な寺院が次々と創建されました。古来より日本にある文化、海外からもたらされた文化が融合しこの国の礎を築いて行きます。
しかしこの時代には様々な苦悩がありました。政治的な混乱や干ばつ、そして疫病の流行です。これを仏教の力で解決しようと「奈良の大仏」が作られることとなります。この奈良の大仏は多くの民衆の手により建設が進みます。
その平城京は誕生してから約80年後、別の場所へと首都の機能が移されることとなります。
都の機能が他所へ移された後も、創建された社寺は奈良の地に残されることとなります。しかしその後の歴史は平凡なものではありませんでした。
地震や台風による倒壊、火災、そして戦乱による被災が、長い年月の間に幾度となく発生します。特に平安時代末期の「南都焼討」では現在の奈良公園やきたまち、ならまちと呼ばれる地域一帯が焼け野原となってしまします。また戦国時代の戦乱でも大仏殿などが被災。後世の廃仏毀釈でも大きな被害を被ることとなります。
しかし、それぞれの混乱の中でも、再建を導く寺院の関係者のたゆまな努力と、民衆の勧進(寄付)により再建を繰り返し、現在の私たちに太古の文化と祈りの場を伝え続けることとなります。これは今日においても続けられており、かつて消失した薬師寺の諸堂の再建や、興福寺の中金堂再建は平成の出来事として記憶に新しいところです。
そのような混乱の中でも、奈良に息づく伝統文化は絶えることなく後世に伝えられることとなります。数々の混乱を奇跡的に乗り越えてきた奈良時代を伝える建築や仏像や正倉院宝物はもちろん、東大寺の「修二会」や「春日若宮おん祭り」、「式年造替」などの行事はその最たる例と言えるでしょう。
明治、大正の時代、現在の大和路線にあたる鉄道が開通し奈良に本格的な「観光」の時代がやってきます。田畑にすっかり姿を変えていた平城京の中枢「平城宮」の跡地の保存運動を始めたのは奈良の住人でした。
戦後、誰もが観光ができる経済発展と共に奈良の街は観光都市として成長して行くこととなります。旧市街である「奈良町」には、保存された街並みに、奈良の伝統産業を始め様々な小売店や飲食店が立ち並びます。この「奈良町」の街づくりは住民主体であることは特筆すべきことでしょう。
マスメディアの発展と共に、太古の交易ルートであるシルクロードがブームにとなり「なら・シルクロード博」の開催されます。平成には毎年の恒例となっている「なら燈花会」「バサラ祭り」現在の「平城京天平祭(春)」そして「なら瑠璃絵」などの観光イベントが開始されます。これら毎年恒例のイベントは奈良の住民によって作り出されたものです。そして平城京ができて1300年となる2010年にはかつてない規模でそれを祝うイベント「平城遷都1300年祭」が開催されます。
あらゆる困難を「人々」の手によって乗り越え、1300年前の都の姿を今に伝える「奈良」は人類にとって普遍的な価値があるとして1998年に「ユネスコ世界遺産」に登録されます。
奈良市はこうした奈良時代、平城京からつづく伝統と文化が盛んな日本を代表する歴史観光の都市として日本国内のみならず多数のインバウンドの流入も期待されています。一見、成熟した観光都市に見える「奈良」では次の未来に向けた戦略的な様々な取り組みなされています。
特に平城宮跡では2008年の閣議決定以降、国営公園として整備して行くことが決まり隣接地と共にその第一期が主に「朱雀門ひろば」として開園。MICE力を高めるため遊休地には本格的なコンベンション施設「奈良県コンベンションセンター」が開業しています。
かねてより問題となっていた奈良公園界隈の交通対策として「奈良公園バスターミナル」の開業や繁忙期でのマイカー流入対策、「ぐるっとバス」などの円滑な移動手段の提供。世界に誇れる観光資源に隣接していながらも活用がなされていなかった場所に奈良公園「瑜伽山園地」の開園や吉城園周辺地区の整備など、既存の観光資源を活かした魅力磨き上げや、ツーリズムの発生に対する諸問題の解決、新たなツーリズム需要を創出する取り組みが市内各所で取り組まれています。
こうした中、今後は奈良市内を縦貫する始めての自動車専用道路「京奈和自動車道」の開通や、奈良市付近に駅が設置される「リニア中央新幹線」の開通も未来の予定として存在し、関西の広域的な環状道路や新たな国土軸の導線上として奈良が立地することとなります。
シェアする