近鉄奈良線の移設を現地写真と共に探る

 近鉄奈良線の平城京-平城宮跡区間を移設することで合意したとの報道がありました。このページではその「概要」を地図と現地写真で見ると共に、意味を考えます。

はじめに

 2020年7月に、現在平城宮跡の中を貫く「近鉄奈良線」を主に大宮通りの地下に移設し、平城宮跡内の景観向上を図ると共に大和西大寺駅付近の高架化も併せて周辺の踏切を除去する「奈良県案」を基に、国、県、市、鉄道事業者の近鉄が協議を進めることに合意したとする報道がありました。その後2021年3月に踏切道改良計画の国への提出および費用分担について確認書を締結しました。(2021年3月の発表においては途中駅の案は別途協議、線形は確定していない。)

 

 この記事では、これまでも度々話題になっていた近鉄奈良線の移転について、これまでの経過と報道に基づいて紹介します。

 

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計画のあらまし

平城宮跡の国営公園化について(2008年)

 甲子園30個分の面積がある平城宮の跡地「平城宮跡」では、2008年に国土交通省による「国営公園」として整備が行われることが決定しました。「平城遷都1300年祭」のメイン会場として使用された後工事が本格化し、同時に平城宮跡南側では公園利用者の為の便益施設として交通ターミナルや飲食、物販施設が奈良県によって「県営平城宮跡歴史公園」として整備されました。これらは平城宮跡南側における国交省及び奈良県の施設群を「朱雀門ひろば」として、第一次朝堂院を含めたエリアを2019年に第一期開園として開園しました。

 

 この国営公園化に関する基本計画が2008年に策定され、一条高校方面から西大寺駅方面へ向かう県道や、平城宮跡中央部を南北に貫く「みやと通り」及び、近鉄奈良線の移設が触れられています。

▲平城宮跡を通過する近鉄線

▲朱雀門ひろば


 

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奈良市内の踏切渋滞

 近鉄奈良線の奈良市内の区間のうちJR線と交わるあたりから近鉄奈良駅まではかつて、路面電車のような状態(併用軌道)として敷設されていました(厳密には長大な踏切)。この区間については大阪万博前年の1969年に地下化され中心市街地から地上を走る鉄道は姿を消しました。一方、JR線より西の区間については地上のまま残され、後の時代の市街地化によって踏切から発生する渋滞及び危険要素が発生することとなります。

 大和西大寺駅周辺の頻繁に列車が走行する奈良線沿線や大和西大寺駅周辺の踏切では渋滞の発生原因の除去や危険の除去が求められます。特に大和西大寺駅周辺では駅のすぐ近くということも手伝い「開かずの踏切」の状態となっている踏切もあります。

▲平城宮跡横の踏切

大宮通り地下への移設で協議すると合意(2020年7月)

 これまでも、度々ニュースや話題になっていた近鉄奈良線の移転の話題ですが、2020年7月に、国、県、市、近鉄が「奈良県の案」(当サイトでは「奈良県案」とする。)を基に協議を進めていくことに合意したとの報道が各社で配信されます。この時点では、あくまで「奈良県案」を基に協議を進めて行くことに同意がなされたものであり、費用分担や線形など具体的な事柄について合意したものではありません。

踏切道改良計画の提出及び費用の考え方について確認(2021年3月)

 2021年3月の発表で国から求められていた踏切道改良計画の国への提出、及び費用分担について確認書が締結されたと発表がありました。国へ提出した踏切除去の内容として「大和西大寺駅」付近の高架化、近鉄奈良線の移設及び大宮通りへの地下化(一部地平)で、2020年7月奈良県案の通りですが、2020年7月奈良県案で登場している途中駅は別途協議、線形は確定していないと発表されています。

>>奈良県公式サイト>該当のページ

2020年7月奈良県案

 2020年7月に協議をすることで合意に至った「奈良県案」では、大和西大寺駅周辺を高架化、これより東の区間については大宮通りの地下(一部地平)に移転するという内容です。また、近鉄奈良駅までの間に3つの駅を設置することとしています。

>>奈良県公式サイト>該当のページ

2020年7月当時の筆者作成
2020年7月当時の筆者作成

2020年7月奈良県案の途中駅

仮称:朱雀大路駅

 各社報道によると平城宮跡/国営・県営平城宮跡歴史公園の南端に、仮称「朱雀大路駅」の設置が盛り込まれました。

 

【現在の平城宮跡へのアクセス】

 現在、平城宮跡へのアクセスは1.5キロ程を大和西大寺駅から歩くか、近鉄奈良駅から「ぐるっとバス」または、奈良交通の路線バスによってアクセス交通は支えられています。しかし、徒歩ではやや遠い距離になるほか、奈良交通の路線バスは1時間1本、夕方頃に最終バスになるなど不便な状態が続いています。

 

【奈良県案の朱雀大路駅】

 予定地は、平城宮跡歴史公園のゲートウェイ機能となる「朱雀門ひろば」に隣接した立地。また「朱雀門ひろば」から大宮通りを跨いだ南側の広大な工場跡地を奈良県が取得しており、平城宮跡歴史公園と一体となった開発が期待される場所となります。

 

▲広大な工場跡地

新大宮駅

【現在の新大宮駅】

 新大宮駅は現在も近鉄奈良線の駅としてホーム2面、線路2線の駅として存在しています。周囲はビジネスホテルや住宅、また奈良県随一の繁華街として栄えている街です。また、西にしばらく歩くと立地している奈良市役所やビジネスビルも周囲にあり、奈良の新市街と言えることができます。

 

【新大宮駅は移設】

 奈良県案では新大宮駅を大宮通りの地下に移設する計画です。奈良県案では現在の新大宮市街地の南側が候補地であり、その西端は「奈良県コンベンションセンター」付近となります。場合によっては2020年4月に開業した「奈良県コンベンションセンター」へのアクセス改善が図られるものと想像できます。「奈良県コンベンションセンター」は奈良市役所の目の前にあり便益施設としての「蔦屋書店」や隣接地に一体的に開発された「JWマリオットホテル奈良」「NHK奈良放送会館」も存在しています。

▲現在の新大宮駅

▲奈良県コンベンションセンター


仮称:油阪駅

 仮称「油阪駅」はJRと近鉄線と交わる場所に設置されると報道されています。これはJRの奈良駅との乗り換えの利便性向上が図られると想像できます。奈良市街の代表駅であるJRの奈良駅と近鉄奈良駅は商店街を経由して900m離れており「乗り換えができる」と言い切れない部分もあります。

 かつて近鉄奈良線が地上を走行していた時代に「油阪駅」は存在し当時の国鉄奈良駅との乗り換えの乗客が利用していたようです。地下化の際に廃止されてしましましたがこの度の計画で復活するのでしょうか。

移設の意味

平城宮跡の景観向上 - 近鉄が平城宮跡を通過しているワケ

 大阪難波方面から奈良に向かうと、「大和西大寺駅」を出発してしばらくすると、広大な草地の空間に唐国風の建物が二つ見えます。ここが世界遺産/特別史跡「平城宮跡」です。近鉄奈良線はしばらく平城宮跡を横断するように走行し、奈良の新市街「新大宮駅」に至ります。

 この古代遺跡が地中に眠る世界遺産「平城宮跡」を通勤電車が横断する光景は、いかにも不思議でありカオスな世界観を醸し出しますが、列車の中から見る光景、また、平城宮跡から見るその景色もいかにも奈良らしい光景になります。この光景をどう評価するかは様々な意見がありますが国営公園整備の基本計画では移設し、景観向上に努める(2020年7月の報道)こととしています。

 

 およそ100年前、現在の近鉄にあたる鉄道会社が鉄道を敷設する際、当時「平城宮」の「跡地」=「平城宮跡」として考えられていた空間を避けるように建設されています。これは現在「第二次大極殿」「朝集殿院」と呼ばれる周辺の部分です。後の発掘が進むにつれ「平城宮」の「跡地」とされる部分が鉄道敷設時に考えられている部分が拡大。現在では平城宮跡に取り込まれるように近鉄奈良線の敷地が存在しています。

踏切の除去

 周囲の踏切の事情については、この記事の上の項目にて紹介した通りです。筆者の私見になりますが奈良市内を広域的に見てみればも一つ事情があるように見えます。それは京奈和自動車道に関連する道路です。京奈和自動車道は奈良市柏木町付近から地下トンネルを経由し木津方面に向かいます。その地上部分に並行するように都市計画道路が計画されています。このルートは済生会奈良病院南側、大安寺地区に設けられる「奈良インター」から新大宮駅改札前の踏切がある道に至る計画で、高速道路のインターから出た交通も含む幹線道路が新大宮駅改札前の踏切に集中する事にもなります。

 あくまで、筆者私見ではありますが、奈良の道路ネットワークを構築するにあたり、この踏切が大きな障害になることは間違えなく、対応が求められることとなります。

クレジット

参考文献

平城宮跡の近鉄奈良線移設へ合意 https://www3.nhk.or.jp/lnews/nara/20200716/2050004845.html

近鉄線「移設案」合意 - 踏切の改良前進/国・近鉄・県・奈良市 https://www.nara-np.co.jp/news/20200717090953.html

平城宮跡横断の近鉄奈良線、県・市と移設協議へ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61604630W0A710C2LKA000/

世界遺産・平城宮跡を横切る近鉄奈良線 「移設」に向け協議へ https://www.asahi.co.jp/webnews/pages/abc_7153.html

踏切の改良に向け平城宮跡内の線路移設へ 県提案ベースに協議 https://this.kiji.is/656718809143264353?c=476913576246887521

大和西大寺駅及び平城宮跡周辺の渋滞対策(奈良県案)(PDF) http://www.pref.nara.jp/secure/232200/naraken-an.pdf

 ※上記リンク元:奈良県>踏切道改良協議会合同会議について http://www.pref.nara.jp/55745.htm

「開かずの踏切」対策 近鉄奈良線移設などで県・市・近鉄が合意 https://www.youtube.com/watch?v=3sXDEtEHR-

踏切道改良計画の策定について http://www.pref.nara.jp/57888.htm (及び添付のPDF資料)

 

 

地図

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この記事について

 この記事は2020年7月の「奈良県案をもって協議を進める事に対する合意」及び2021年3月の「国への踏切道改良計画の提出及び、費用分担の考え方について確認書を締結」に関する報道を受けて一部私見を交えて記したものであり、今後発生しゆる諸々の事情について筆者が特定の意見を表明するものではありません。